USTREAMが災害対策本部を変える|三田市の防災訓練を控えて

2012年1月16日


東日本大震災を受け、各地の防災訓練における意識も高くなっています。
その中で、私も関わっている兵庫県三田市の避難訓練における情報共有の取り組みが実にすばらしいので、少しこのことについて書いておきます。

 

防災訓練で、USTREAMを用いた情報共有を行う

この1月22日に兵庫県三田市で総合防災訓練が行われます。災害対策本部を設置する城山公園と避難所2箇所による同時訓練です。
私も関係者だったりしまして、打ち合わせ等にも参加させていただいています。
 

 
この訓練の中ですばらしいのが

  • 災害対策本部と避難所2箇所でU-streamを使って互いに「リアルタイム映像」を共有する
  • 互いの連絡をskypeを用いて行い、その様子もUSTREAMする
  • それらのリアルタイム映像をミキシングして一本化して災害対策本部から公開する

ということで、災害対策本部と避難所の状況をリアルタイムに外部に情報発信する実験が行われること。
 
以下で、このどこがすばらしいかを熱く語ります。
 
 

被災地の情報は「距離」で変わっている

災害発生後の被災地の情報は、情報の受け手が「被災地にいる」、「被災地にいない」で全く変わります。

1.被災者は自分たちの状況は比較的わかるようになった

被災地にいる場合は、阪神淡路大震災・東日本大震災の教訓を受けて、比較的多くの情報を獲得できるようになりました。

コミュニティFMに代表される地域メディアや地元新聞社が寝ずの努力で「今、どういう状況なのか」を伝えようとします。
災害対策本部までいけば、連日更新される災害情報が手に入り、ボランティアにきた若者の一部は「情報ボランティア」として、壁新聞を作ったりします。
 
「まだまだ足りない」と言い出したらきりはありませんが、ヒューマンパワーが限られた状況下で「情報共有」の比重は過去と比べて飛躍的に高くなったということができます。
 

2.被災地から距離があると、被災地の状況がなかなかわからない

しかし、被災地周辺部から情報を得ようと思うとコミュニティFMを漏れ聞くことができるぐらいであり、その他の地域にいる場合はもう完全にマスメディアとソーシャルメディア頼みです。
しかし、マスメディアは「何が起こったか」は伝えるものの、「被災地が今どういう状況なのか」は教えてくれません。
 
阪神淡路大震災発生後1週間も経たない間に、「東日本でも同規模の災害が起きたらどうするか」の特集をはじめました。
東日本大震災の時のもっぱらの関心は停電問題であったことからも、1.何が起こったかしか教えてくれない、2.情報は被災地のためではなく、多くの視聴者(東京県内)のために発信される、ことが明らかです。
 
また、ソーシャルメディアは「個人レベルの状況」を共有するのにはいいですが、その情報は自分の知り合いに限定されて偏っており、広い視野に立った情報を得ることができません。(もちろん、知り合いの「今」を知れるということは素晴らしいことですが)
 

3.被災地外から情報を得ようとする人に注目する

被災地の外からマスメディア以上の情報を得ようとするのは、1.被災者の家族知人、2.支援しようと考える人、であることがほとんどです。
 

 
被災者の家族知人が安否を知りたい場合は、発展したソーシャルメディアと携帯電話で一時は凌ぐことができるでしょう。
 
しかし、支援しようと考える人が知りたいのは、点の情報ではなく面の情報であり、しかしながらマスメディアが報道しないローカルな情報です。今までそういった情報を獲得しようと思うと、様々なルートをたどる必要がありました。
 
しかし、近年の災害を考えると、本当に注目しないといけないのはこういった「支援者」に向けてだとわかってきました。
 

情報の質で支援が変わる

被災直後に被災地がどういった情報を発信するかで、それ以降受けることのできる支援が変わります。
 
ーーといったら何ですが、東日本大震災において真っ先にボランティアセンターを立ち上げ、ブログ等で情報発信を行った「石巻」には早い段階からボランティアが殺到しました。
これだけリアルタイムに他地域の情報が獲得できる時代ですので、言い方は悪いのですが「情報を知らせたもの勝ち」な一面があります。特に、被災地を「面」でとらえることのできる情報の拠点となっている災害対策本部(行政)が持っている情報はとても重要です。
 

 
その反面、災害対策本部では情報発信に消極的な一面があります。人手が足りない中、全員が寝ずに対策に追われている中、どうしても情報発信は後回しになってしまうのです。
また、いざ記事を書いたとしても行政の稟議主義はそのままですので、外部に出す情報として上司の承認を得る必要があります。どうしてもリアルタイムな情報発信は難しいのです。
 
つまり、災害対策本部には、1.発信する情報を作成することができない、2.承認が必要な情報を発信することが難しい、といった問題が構造的にあるのです。
 
 

リアルタイムな映像中継が問題を解決する

言い換えると、「情報を発信するために作らない(手間がかからない)」うえに、「細かい承認を得る必要がない」情報発信の仕組みを作らないといけないのです。
 
余談ですが、私が兵庫県佐用町で行政側の災害報道(CATV)をお手伝いした時は、10分番組でも30分番組でも行政責任者をつかまえて「全て」視聴してもらい、チェックを受ける必要がありました。無論、これがボトルネックになり、流せなかった番組も、放映が遅れてしまった番組もありました。
 

 
しかし、近年USTREAMに代表される「映像のネット生中継」が一般的になってきました。これは、生中継なので承認作業が物理的にできません。
また、多くても1人のスタッフ、それさえ確保できなくても固定カメラで放置することすらできます。
 
「ネット回線が生きている」という制約はありますが、これで災害対策本部の情報発信の課題が解決するのです。
 
もちろん事前に被災時で使えるように防災計画の中に入れておく、防災マニュアルに入れ込んでおくというシステム化の必要はあります。
しかし、それさえ乗り越えることができればリアルタイムによる臨場感や速報性といった強みも享受した上で、今まで空白地であった「被災地外にいる支援者」に最新の情報を伝えることができます。
 
また、被災後継続的に同じURL(チャンネル)で情報発信を続けることができれば、そのURL(チャンネル)がフロントメディアとなり、公式の復興関連情報や、その次のプロセスとして観光情報のURL(チャンネル)を育てることも見据えることもできます。
 
 
 
はじめに紹介した今度の三田市の防災訓練でUSTREAMを使った情報共有を行う裏に、これだけの背景があることを考えると、本当にすばらしい取り組みだと思います。
 
それでは、また。

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