『「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」に係る提案公募』をしっかり読んでみる。

『「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」に係る提案公募』ってどう思う?と聞かれまして、なかなかな募集要項なので記事にしておきます。

概要

以下で公募されています。
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu05_02000079.html
 
プログラミング教育を企画・実施する事業者だったらNPOでも株式会社でもいいし、学校設置者(学校法人)でもいいので、学校でプログラミング教育したい事業者は応募して下さいという内容。
 
ちなみに目的は以下の通り。
 

総務省は、今年度から新たに「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業を実施しています。その一環として、クラウドや地域人材を活用した、効果的・効率的なプログラミング教育の実施モデルについて実証するため、当該実証に係る提案公募を行うものです。

 
「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業って何かなと思ったら、以下URLに概要ありますね。
 
http://www.soumu.go.jp/main_content/000375379.pdf
 
簡単にいうと、IT企業やNPOなどプログラミング教育を行うことができる組織が自治体と協力して、初等中等教育を受けてる人にプログラミングを教えましょうという事業。今年からの新規事業で5億円の予算がついています。
 

金額

上限500万円です。
なかなか微妙な金額帯。全額利益だったらいいんですけどねー。フルタイム雇用で1人雇ったら大半がふっとぶ金額、といえば想像つくでしょうか。
 

交付元

さて、補助金事業をみるときは、まずどこが交付するかをみます。
省庁(国)なのか、都道府県なのか、市町村なのか。このことで何がどう変わるかとかは補助金に詳しい方に聞いていただきたいのですが、とりあえず省庁の補助金は、金額がでっかい、とってもでかい代わりに、「会計検査」がくることがあります。税務調査の補助金版みたいなものです。
会計検査を行うのは、会計検査院の職員で、交付している省庁とは異なるので、よくある「暗黙の了解」などの支出は不適切とされ、「補助金返還」を求められます。なので、2億の補助金事業を完了した3年後に会計検査があって、1000万円返還させられ大赤字を出した、みたいなプロジェクトは往々にあります。あ、数字はダミーですよ。
 
まぁ、補助金あるある話は片隅においておきまして、今回の募集の大本は総務省です。教育事業だと、文科省系の事業になってしまいますが、今日まで日本においてIT推進を行ってきたのは総務省。
電波もそうですし、各種実証実験もそう。文科省がノウハウないからと手放したのか、総務省が自らの領域を守りたかったのかはわからないので何ともいえませんが、本事業は総務省の事業です。
 
で、事務局は電通。
大きな補助金事業の場合、往々にして「事務局」が置かれます。「全業務を省庁でやってられないから、補助金交付先を束ねる役割」を負うのが事務局で、聞いた話では。

  • 交付先よりも潤沢な経費をもらっている
  • けど、やることは事務局作業だけ。現場が困っても助けてくれない
  • 要望・要求をあげても、省庁と伝言ゲームをしてくれるだけ。現場の解決どころか。
  • けど、事務局業務の完遂のために、現場からの報告はめっちゃ求める。省庁に「どうなってる?」と聞かれて答えるのが仕事なので、必要以上に報告をめっちゃ求める。
  • あと、やることがないのか、文章フォーマットめっちゃ大事にする。罫線1本で書類を突き返したという噂も。

電通がどういった事務局業務をするか知りませんし、もしかするとベテランの事務局員を置くかもしれず、そもそも上記なんて担当者レベルの問題ですので、本事業でそうだとは限りません。けど、構造的問題として、事務局を置くということは、省庁サイドにとっては煩雑な事務作業が減る反面、現場にとっては労力が減るということはまぁまずないです。
 
にしても、電通も公募で事務局に採択されたはずなのですが、本事業で電通がいくらで請けたかネットにあがっていない・・・。
 
徒然と書きましたが、交付元は、大本は総務省で、事務局業務を電通が担ってます。
 

募集要項

さて、ようやく募集要項にはいります!
事業の趣旨で、早速「なお、当事業における取組は、教育課程外で行うものとする。」との表記があり、総務省と文科省の綱引きの様子が見受けられますが、そこはそっとしておきましょう。
募集要項は以下です(PDF)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000421094.pdf
 
まず、事業者が行わないといけないことは「メンター(プログラミング指導者)の育成をして、子どもにプログラミングを教える」ことです。まぁ、そのメイン業務は置いといて、補助金要項として以下も行わなければなりません。
 

  • 総務省が実証実験でつくったクラウドプラットフォーム(eラーニングシステム)などに、事業で利用したノウハウを登録。事業終了後も、それを使いたいという学校があったら無償(か廉価な価格で)提供しましょう。
  • 前項の「ノウハウ」登録のために、メンター育成などは動画をとって、わかりやすいように編集しましょう。事業内だからもちろん500万円の枠でね。もちろん教材・ツールも提供必須。
  • あくまで今回は実証実験。そのあと、本運用があるから、本運用のときに場所に困らないように、学校などの無償利用できる場所でのみ開催できますよ(AvivaとかのPC教室対策かな)
  • 育てたメンターは、名簿化して、総務省にその名簿を渡す。あ、メンターには交通費しか渡したらいけませんよ!(じゃないと、本事業の時も支給しないといけなくなりますからね!)
  • あと、いろいろなプログラミング言語がでてきたら、調整のため(何を調整するんだ)総務省がプログラミング言語を指定することもありますよ。その場合、その言語を覚えて、メンター指導して、プログラミング教育してくださいね!

 
さて、そろそろお気づきでしょうか。つまりは、1. 実施者からノウハウを吸収し、 2. 育てたメンターは実施者を通さず連絡できるパイプをつくり、 3. 本実施になったら、実施者を外して事業実施する、ための事業ですよね、これ。
なんか、遠回しに書こうかと思ったけど、無理。少なくても私にはそうとしか読めない。
 

応募内容を考えてみる

で、ちょっとここで仮に応募するとして、事業構成を考えてみましょう。
 
まず、CoderDojoみたいなプロフェッショナルがメンターをする構造は無理です。ノウハウはメンターにあって、集約的に主宰者が持っているわけではないので。
で、次点でPC教室。でも多分、AvivaみたいなPC教室は無理。だって、ノウハウもっていかれたら経営成り立ちませんし、ノウハウを提供する上限金額が500万円なんですもの。到底割にあわない。かつ、メンターを正社員にさせるわけにもいかないし、受講生にさせるわけにはもっといかない。
 
となると、まずボランティアベースの参画は必須ですね。で、かつ、エンジニアではないボランティアを本事業を通してメンターに育て上げる。となると、ひとつは就職支援系の実績づくりではありかもしれません。大学生に「地域で子どもと関わろう!」とかいったらいいのかな。で、成果として、プログラミングを覚えられますよ、と。
いや、新規で大学生の募集をかけるよりも、子どもと遊ぼう!みたいな活動をしている大学サークルと手を組む方が早いですね。「本サークルは10年目を迎えているので、本メンター卒業後もサークルという母体のもと、継続事業が行えます!」みたいな感じで。動画編集サークルとも手を組めたら理想的。で、大学側でも発表して学生の実績としてもらいましょう。子育て市民活動団体と組むのもありかも。
 
とか、よくある応募パターンですが、うーん、不毛。
結局は、500万円という予算を考えると、うち半額をメンター指導員に使ったとしても250万。まっとうなエンジニアを1人確保できたら奇跡。その上で、子どもたちは、事業内で表面上指導の仕方だけ教わっただけのメンターから指導を受ける事業。
 
あー、そう思うと、「情報の免許とったあとでプログラミングが必須教科になって困ってる教員」では力不足だから、「まだ一応は指導の仕方を教わったメンター」も入れようぜ議案なのかも。悲しい。それなら、こんな事業に500万円使うよりも、CoderDojoという先駆者に対して、しっかり視察研修費を支払って学びにいくか、もしくは地域毎にIT教育をどうやっていくかをゼロベースから議論する方がよほど現実的だと思うんですけどね・・・。
 

本事業とCoderDojo

ここでCoderDojoを取り上げる理由は、情報提供者がCoderDojoの主宰者だからに他なりません。誰とはいいませんが、秋吉をこよなく愛するあの方です。

1. CoderDojoは分散知だからそもそも対象外

理想的なのは、CoderDojoをそのままに補助金もらえて、これを機会にして学校のPCルームとかを来年以降も自由にできることです。労力zeroで、(使い道は限定されますが)お金をもらって、開催場所も確保!
でも、残念なことに、本事業の目的は、メンターへの研修メソッドを吸収することです。でも、CoderDojoはメンターがそもそもプロであり、中央管理的に知識共有を図っているわけではないので本事業の目的から外れます。「え、面接と諸注意だけ動画に撮ればいいでしょ?」とすっとぼけることもできますが、プログラミング言語指定がそもそも沿いません。メンターに、「補助金の関係で、みなさんJavaを教えれるようになってください」というあたりのことを想定してもらえれば・・・。

2. メンターには交通費しかだせない

本事業では、「プログラミング教材開発」「メンター育成」「講座設計」「動画制作」「報告書作成」などに経費を支出することができます。が、メンターには交通費のみです。かつ、メンターは教育対象なので、同一人物が教材開発をして、メンターをする、ということができません。
ということは、本事業を請けると、補助金により「儲ける人」と、今までどおりやってるのに「交通費しかでない人」が分かれます。
 

3. レイヤーが異なるので競争相手にならない

「地域でプログラミング教育があるならうちが」的発想もありますが、この事業って1年限りで、翌年以降は「学校などの要望によりメンターを派遣する」形になります。学校の課外教育に編入されるか、もしくは文科省とごにょごにょかと。
ということは、結局のところ、子どもの特性にあわせて、子どものやりたいことを。その結果、Jenkinsを扱う小学生がでてきた!みたいなのは主目的ではなく、みんなが技術の授業でラジオをつくるがごとく、プログラムコード書けてよかったね!に落ち着かざるえないと私は見ています。
 
ですので、そもそもCoderDojoとレイヤーの異なる話であり、わざわざ「補助金があるから」歩みを進める必要はないかと思います。
 

まとめ

まぁ、補助金ってそもそも麻薬だからもらわない方がいいと思ってる人なので、より否定的なところはありますが、何ともいえない補助金メニューですよね。
私的には、CoderDojoは本事業に関わる、というよりも、行政がCoderDojoに予算つくった上で随契でお願いしにいったり、一緒に戦略を考えるべきじゃないかなと思っています。
 
それでは、また。

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